【棚卸資産の評価に関する会計基準】②正味売却価額の考え方

正味売却価額の考え方

棚卸資産への投資は、将来販売時の売価を想定して行われ、その期待が事実となり、成果として確定した段階において、投資額は売上原価に配分される。このように最終的な投資の成果は将来の販売時点であることから収益性の低下に基づく簿価切り下げの判断に際しても、期末において見込まれる将来販売時点の売価に基づく正味売却価額によることが適当と考えられている(会計基準41項)。

要するに、期末時点の棚卸資産は将来いくらで売れるのか、投資回収はできるのかがポイントということである。そして、この判断における正味売却価額については、原則時価をベースとすることが求められるが、それぞれのケースに応じて次のようなことを考慮する必要がある。なお、実務負担も考慮し収益性が低下していないことが明らかである場合には正味売却価額を見積る必要はないとされている(会計基準48項)。

◾️市場価額が観察できない時
期末前後での販売実績や契約により取り決められた一定の売価などの合理的な価額を売価とする(会計基準8項)。なお、期末の売価により正味売却価額を把握する場合、期末日時点の売価が突発的な要因により、異常な水準となっている時には、不適切な評価結果となることから期末時点の売価でなく、期末付近の合理的な期間の平均的な売価に基づく正味売却価格によることが適当である(会計基準43項)。

◾️製造業などで再調達原価が把握しやすい時
正味売却価額と再調達原価が歩調を合わせて動くと予想される時には、継続適用を条件として再調達原価によることができる(会計基準10項)。

◾️複数の売却市場に参加しうる時
実際に販売できると見込まれる売価による(会計基準11項)。これは、例えば①消費者への直接販売と代理店経由での間接販売②正規販売とアウトレット③特定の販売先との契約により一定の売価で販売することが決定されている場合とそのような契約がない場合などの売却市場への参加が可能な場合を想定している(会計基準51項)。通常、売価の高い市場への参加が想定されるが、実際に参加可能な市場での価額に基づく必要がある。なお、明確に区分することができない場合などには、それぞれの市場の販売比率を用いた加重平均売価等によることになる(会計基準52項)。

◾️収益性の低下の判断及び簿価切り下げの単位
収益性の低下の有無に係る判断及び簿価切り下げは原則として、個別品目ごとに行うが、複数をひとくくりにすることが適切である場合には継続適用を条件として、その方法による(会計基準12項)。ここで、適切と判断される場合とは①補完的な関係にある複数商品の売買を行っていて、一方だけでなく、双方の売買によった場合に正常な水準を超える収益が見込める場合、②同じ製品に使われる材料、仕掛品及び製品を1グループとして扱う場合、などである(会計基準53項)。


関連する会計基準
企業会計基準第9号 棚卸資産の評価に関する会計基準(平成20年9月26日)

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